DISCOGRAPHY

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4th ALBUMMIND SCREEN

SECL-3004
2021/06/23 2021 DIGITAL REMASTER
1979/05/21 released


  • 01子午線
  • 02幻想庭園
  • 03インディアンサマー
  • 04愛を眠らせて
  • 05いつわりの日々
  • 06ダンシング レディ
  • 07朝のシルエット
  • 08サイレント ムーヴィー
  • 09グッド・ナイト・エンジェル
  • 10悪い夢

Produced by 鈴木幹治(東京音楽出版)
Directed by 須藤晃(CBS/SONY)
Sound Produced by 水谷公生
Recorded and Mixed by 吉田保

Drums Robert Brill
Bass 岡沢茂
Piano and Keyboards 佐藤準
Guitar 水谷公生
Acoustic Guitar 笛吹利明
Percussion 斉藤ノブ
Saxophone Jake H.Concepcion
Backing Vocal 町支寛二

Photographer 清水清太郎
Designed by 矢野雅幸

CBS/SONY  信濃町Studio.
Onkio Haus. Sound City Studio. Media Studio.

悪い夢

若き夢 追いかけて ひたすら駆けてきた
子どもの頃の貧しい日々 怒りをバネにして
いつわりも 裏切りも かけひきも 飲みほし
遠くへ ただ遠くへと ここまで来たけど

坂道を振り向けば そこにいたはずの友も恋人も見えない
でももう今は引き返せない
まるで悪い夢を見てるみたいだけど

飛び跳ねて落ちてゆく 束の間の刹那を
つなぎ合わせ 生きてきただけ 何ひとつ得られずに
僕はただ無駄な日々 過ごしてきたのか
もう一度 やせた翼で どこへ飛び立とう

黄昏に振り向けば 涙がこぼれちまう ひとり 帰り道
でももう今は引き返せない
まるで悪い夢を見てるみたいだけど

もしも人生をやり直せたら…と考えることって誰でもあるんじゃないかな。あの時こうしていたら…とか、あんなことしなければ…とか考えるけど、自分が現在置かれている状況というのは、誰のせいでもなく、かつて色んな局面で自分が選択したり、やったりしたことが連なり、積み重なった結果なんですよね。
もし20歳の時にAIDOというバンドに参加しなかったとしたらどうだろう、今こうして音楽をやっていただろうか。……ハイ、それでも、間違いなくオレは音楽をやっていたと思います。少年時代、音楽に対する愛情は何物にも勝るものでした。初恋の相手はR&Rですから(笑)。もちろん、今とは全然違う音楽人生になっていたとは思いますが、曲や詩も書いていたでしょうね。歌詞に関しては、違う人生なら、全く違った歌詞になったと思いますが、メロディーに関しては同じようなメロディーを作っていたんじゃないかと思います。

何故こんな話をするかというと、もしも、この4作目のアルバム“MIND SCREEN”の歌詞を当時全曲自分で書いていたら、というか書けていたら、きっと今もステージで演奏している曲が何曲もあっただろうな…と思うんですよね。というのは、メロディーの完成度は初期のアルバムの中で最も充実しているんですよ。どの曲もポップでキャッチーなメロディーを持っています。
しかし、振り返ってみて、どう考えても自分で歌詞が書けたとは思えないです。前作の『イルミネーション』から煮詰まり始めた作詞ですが、このアルバムの時はもう何も書ける気がしなかった。自分が何者なのか完全に見失い、混乱していました。そこで、制作スタッフの中から作詞家に依頼しようという意見が出てきたのだと思います。当時はまず最初にリリース日が設定され、それに合わせてレコーディング・スケジュールが組まれ、曲作りをそれに間に合わせる、というものでした。『イルミネーション』が78年の9月末にリリースされて、その8ヵ月後にリリースされる訳ですから、時間的にみても無理だったでしょうね。

このアルバムの、編曲と演奏、ミックスを合わせた、サウンドのクオリティーは素晴らしいものがあります。ポップ・アルバムとしての完成度は高く、水谷公生さん、レコーディング・ミュージシャン達、エンジニアの吉田保さんの技量の凄さを感じさせます。でも、このアルバムもまた、レコーディングの風景というものが殆ど浮かんで来ないんですよ(笑)。自分がサウンド作りに参加出来るスペースと余裕というものが無かったんでしょうね。とにかく曲と歌詞を締め切りまでに間に合わせねばならない、それが最優先される状況でした。もし、サウンドに関しても自分がアレンジやスタジオ・ワークに参加するとなると、一枚のアルバムを制作するのに最低でも12ヶ月は必要だったでしょうね。

そんな中、自分で詞を書いた『いつわりの日々』『Good Night Angel』『朝のシルエット』の出来は悪いものでは無いし、『悪い夢』は当時の気持ちがそのまま素直に歌になっています。作詞家に依頼したものの中では『子午線』の森田由美さんの歌詞は実によく書けているなと感心します。イントロの佐藤準さんの弾くシンセの音色とフレーズが美しいです。ところで、作詞家の方達に書いてもらった曲は殆どステージで演奏していないのですが、それは歌詞が好きになれないということではなくて、どうしても歌詞を覚えることが出来ないんですよ(笑)。このアルバムを作って、はっきり分かったことは、やはり自分の言葉で歌を作らなければ、自分の歌にならないんだ…ということでした。

『イルミネーション』がリリースされて暫くして、CBS/SONY内の人事異動で新しいディレクターがオレの担当になりました。後に尾崎豊くんを発掘し育てたプロデューサーとして高く評価されることになる須藤晃くんです。食事の席が設けられ、人事異動の説明の後、制作部長から紹介されて知ったのですが、オレと同い年、東大英文科卒、アメリカ放浪の旅から帰国して入社ということで、面白そうな人だなと思いました。でも最初は、互いに社交的な人間ではないので、ぎこちない感じでしたね。
彼がオレにアドバイスしてくれたことで印象的なのは「レコーディングってのは記録することだから、完璧でなくても今ある歌詞を記録すればいいんだよ」という言葉ですね。彼にとってはリリースの締め切り間近で焦って出たフレーズかもしれないけど(笑)、説得力のあるディレクターらしい励ましの言葉でした。70年代の終りから80年代、彼とオレはまさにクラスメイトのように一緒に学習し成長していったという感じがあります。

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