DISCOGRAPHY

cd-img

17th ALBUMEDGE OF THE KNIFE

SECL-3018
2003/09/26 REMASTERING
1991/09/01 released


  • 01SWEET LITTLE DARLIN'
  • 02想い出のファイヤー・ストーム
  • 03恋に落ちたら
  • 04EDGE OF THE KNIFE
  • 0519のままさ
  • 06キャンパスの冬
  • 07愛のかけひき
  • 08途切れた愛の物語
  • 09ラストショー
  • 10遠くへ

1曲目「SWEET LITTLE DARLIN’」の歌詞“悲しみひとつ背おうたびに 輝いてくれ昨日よりも”。ティーンエイジャーに贈るメッセージとして、これほど優しく深い一節もないのでは。バラード集第3弾となる本作は、シリーズ映画なら「エピソード1」に当たる、危うく無邪気な少年少女達の物語。

 『SAND CASTLE』は20代の若い恋人達が主人公で、『WASTED TEARS』は30代になった大人達が主人公。これは10代後半から20代にかけての恋人達が主人公として登場するアルバム。
 当時「(シリーズ前作の)『WASTED TEARS』が男と女とか恋愛に対して諦観を持ったアルバムだったから、もっと肯定的な作品になればいいなと思っている」と語っているけど、ティーンエイジャーが主人公だから、刹那的で危うい面もあるけど、とても無邪気だし、基本的には歌は肯定的になるよね(笑)。
 ただ、『WASTED TEARS』を作っていたときはシリーズ化しようとは考えていなくて、『WASTED TEARS』で星さんと再会して、とても内容の濃いアルバムが完成したので、また星さんのサウンドプロデュースでアルバムを作りたいと思ったんです。
 そして、星さんとだったら、『SAND CASTLE』や『WASTED TEARS』の続編的なものでいいアルバムが出来るんじゃないか、と。
 前の2作はスローバラードをメインにしているんだけど、この『EDGE OF THE KNIFE』は歌の主人公達の世代や背景の物語を重視した選曲になっていて、最初は「独立記念日」「反抗期」「MONEY」「DADDY’S TOWN」などの曲も候補としてはあった。
 でも、サウンドの方向性として『SAND CASTLE』からの流れを踏襲したかったので、最終的には極端にエッジの効いたロックは選びませんでした。
 ミックスエンジニアのトム(Tom Lord-Alge)との出会いのアルバムでもあるね。
 ミュージシャンやエンジニアについては、鈴木さんと星さんに任せた感じで、エンジニアについて俺は、その当時「音がいいな」と思った作品を候補として挙げて、アルバムのサウンドに合う人選をしてもらいました。
 その中に、スティーヴ・ウィンウッドのアルバム『BACK IN THE HIGH LIFE』があって、それがトムのミックスだったんだよね。ほかに、ジュード・コールの『A VIEW FROM 3RD STREET』もあった(※こちらはお兄さんのChris Lord-Algeのミックス)。
 トムはもともとニューヨークの人なんだけど、その彼がロサンゼルスでスタジオを始めたばかりの頃で、ロサンゼルスなら仕事もやりやすいし、鈴木さんは何か縁のようなものも感じたようでした。
 ただ俺は、今では考えられないけど、何故だか、おそらくツアーをやっていて、ミックスには立ち会えず、トムと実際に会ったのは『その永遠の一秒に』のとき。そしてその後に、彼と俺との最高傑作と言っていい『青空の扉』がある。
 でも、その後の彼はスケジュールが全く取れない売れっ子になって、ロサンゼルスからも去ってしまった(※その後、U2やローリング・ストーンズ、アヴリル・ラヴィーンなど数々のアルバムを手がける。スピッツ、B’z、RADWIMPSなど日本のアーティストの作品も数々手がけている)。
 だから、結果的には彼がブレイクする直前の、ある意味とても幸運なときに出会えたのかもしれない。そして、『Journey of a Songwriter~旅するソングライター』で「お互い大人になったねえ」というような、いい再会が出来た(笑)。
 『Journey of a Songwriter~旅するソングライター』はトムと、お兄さんのクリス、そしてJ.J.P.(Jack Joseph Puig)という3人のエンジニアがミックスに参加してくれていて、音数の多いものをトムにミックスしてもらいました。彼は、たくさん入っている楽器の音すべてを綺麗に整理して、繊細でありつつダイナミックに仕上げてくれるんだよね。
 『EDGE OF THE KNIFE』も音数が多いけど、繊細でダイナミックな、奥行きの感じられる音になっていると思う。
 そして、10曲中7曲のドラムを小田原くんが叩いているんだよね。つまり、彼との本格的な出会いのアルバムなんだけど、レコーディングについては星さんに任せていて、スタジオの風景とかは殆ど覚えていない(笑)。
 小島くんもたくさん弾いてくれているし、バカボン鈴木さん、ペッカーさん……名うてのミュージシャンばかりだよね。そして武沢豊くんは、「遠くへ」のソロをはじめギターの核的な存在だった。
 音がすごくプロフェッショナルでいて歌の内容がすごく若々しい、その辺のバランスが絶妙な、よくプロデュースされたアルバムだと思う。
 『WASTED TEARS』のような、音も成熟していて歌の内容も成熟しているものはあるけど、歌の内容が若々しくて、音が成熟している、プロデュースされているって、あまりないよね。
 2003年の『初秋』と合わせて映画の第1章から第4章だとすると、3作目のこれは第1章になる青春映画かな。
 もちろん、このアルバムを作ったときに俺は30代の終盤だから、そんな自分から見た、思い出の少年少女達の歌であることは確かです。
 そして、1曲目に「SWEET LITTLE DARLIN’」があって、この曲だけ10代後半から20代にかけての男女のストーリーではなく、まるでナイフのエッジの上を歩くような若い日々を今まさに送っている子ども達に向けて大人の視線で歌う、アルバムや映画のプロローグのような形になっています。
 1991年の作品だけど、今でも、ちょうど思春期になるような少年少女達に贈りたい、そんなアルバム。

(インタビュー構成/古矢徹)

BACK