DISCOGRAPHY
19th ALBUMROAD OUT "TRACKS"
SECL-3020
2021/06/23 2021 DIGITAL REMASTER
1996/02/29 released
- 01A PLACE IN THE SUN
- 02夏の終り
- 03今夜こそ
- 04ベイ・ブリッジ・セレナーデ
- 05悲しみは雪のように
- 06ラストショー
- 07少年の心
- 08いつかもうすぐ
- 09IN THE STILL OF THE NIGHT ~ MAYBE
- 10MAINSTREET
- 11J.BOY
- 12最後のキス
- 13サイドシートの影
- 14我が心のマリア
はじめて人前で歌ったモータウンの名曲、さらにルーツのひとつであるドゥワップのカバーを含めた、ライブありリメイクありカバーありの全14曲は“ANOTHER SIDE OF SHOGO HAMADA”ともいえる内容。浜田省吾初心者にもおすすめ、ドライブミュージックとしても最高の1枚です。
ジャケット写真は、自分のアルバムの中で、お気に入りランク最上位の一枚。
ジョージア州のジキル島というところの、どうってことのない浜辺のボードウォークに座っている写真だね。構図、日没の光、被写体の趣……偶然撮れた一枚。
原点になるのは、1995年の4月に出した『ROAD OUT』という写真集。当時、角川書店から見城徹さんが独立して幻冬舎を作るというので、「協力してくれないか」と田島さんを通して写真集を作る話を提案されてね。
田島さんとの旅がはじまった1986年からの写真で構成された写真集のための旅行で、1994年の11月から12月にかけて、新たにアメリカのジョージア州とアリゾナ州とニューメキシコ州で撮影をしたんです。
映画『フォレスト・ガンプ』の公開と同じ時期で、舞台になった「サヴァナ」という街にも行っている。フォレスト・ガンプがエビ漁船で漁をする船を買うというシーンがあって、なぜかエビ漁の船の写真を撮りに行ったりもして(笑)。
あれは偶然だったのかなあ、それとも田島さんが映画を観ていて、そこをロケーションとして選んだのかな(※映画のアメリカ公開は1994年7月、日本公開は翌年の3月なので撮影はその間の時期)。
そして、その写真集を作っているときに、何か文章を書いてくれないか、と言われてね。写真の下にキャプションみたいに載せるつもりで書いたんだけど、なぜか全部ひとまとめで小説みたいな形で載ってしまった。無駄な箇所は省いて、映画でいうトレイラーみたいな感じにしたかったんだけどね。
だから、自分としては少し不本意なものになったんだけど、書いている時に「これを短編映画にしたら面白いかなあ」と思っていて、そのアイデアから映像作品『ROAD OUT “MOVIE”』が生まれたんです。
そして、『ROAD OUT “MOVIE”』の中の「BASEBALL KID'S ROCK」に挿入する、野球をしているシーンの撮影の日の朝、目覚めた瞬間に「さらに、サウンドトラック盤を作ったら面白いんじゃないか」とひらめいた(笑)。
“MOVIE”と重なってる曲は何曲かありますけど、ニューテイクもあるし、スティーヴィー・ワンダーの「A PLACE IN THE SUN」や、ザ・ファイヴ・サテンズの「IN THE STILL OF THE NIGHT」など、“MOVIE”には入っていないカバーもあるし、ライブテイクもある。
当時の現場マネージャーの新川はライブアルバムが好きらしくて、「ライブアルバムを作りましょうよ」とずっと言っていて、俺は聞かないふりをしていた(笑)。
でも、俺自身も「ライブアルバムも面白いかな」とは思っていて、「新川を喜ばせてやろうかな」……なんて(笑)。ただすでに『ON THE ROAD』というライブアルバムを作っていたので、ライブだけのアルバムを作るつもりはなかった。
もう一方で、カバーアルバムを作りたいという気持ちもあったんだけど、カバーだけのアルバムを作るのもどうかと思っていた。
それで結果、ライブテイクとカバー曲をミックスした作品になりました。
前作の『その永遠の一秒に』が打ち込み系でガチッと構成されたサウンドのアルバムだったので、これは牧歌的な感じで、全体を通してすごくリラックスして聴ける、そんなアルバムにしたかった。
カバー曲はトム(Tom Lord-Alge)がすごくいいミックスをしてくれています。
最近リマスタリングしたので音がより良くなっています(笑)。どことは言わないけど、当時マスタリングで悔いが残った部分があったんでね。
1曲目が「A PLACE IN THE SUN」で、アレンジは敢えてスティーヴィー・ワンダーのオリジナルそのまま。16歳のときにはじめて人前で歌った歌だからね。
ロードムービーのサウンドトラック盤のような、それまでの俺のアルバムには無かったような内容のアルバムになっていて、そういう意味で“アナザーサイドオブ浜田省吾”とも言える内容になっています。
ラストの「我が心のマリア」は2バージョン録って、ひとつのテイクはインストゥルメンタルで、“MOVIE”のラストのクレジットロールに使われています。この“TRACKS”では俺が歌っている。
梁くんが素晴らしいアレンジをしてくれました。ORIGAと一緒にやったときはコンテンポラリーな感じでやったんだけど、今回はトラッドな感じでやろうと。アイリッシュミュージックで使われる楽器を使ったりして、アコースティックな音になっています。
歌も、ORIGAの歌があまりに素晴らしいんで、最初はあんなふうに歌えるかなあ、あれを超えることが出来るかなあと思っていたんだけど、作家は作家なりの歌い方が出来たと思います。
(インタビュー構成/古矢徹)